なごやかに同窓の輪が広がる
講演会の模様 |
福島信陵会の平成30年新年会は2月1日、福島市のウェディングエルティで同窓生114人が出席して開かれました。新年会に先立って講演会が行われ、福島市唯一の造り酒屋である有限会社金水晶酒造店常務の斎藤美幸さんが「ふるさとの誇りを日本酒で繋ぐ」と題して講演しました。
講演に続いて新年会に移り、司会は手塚健一氏(大39)。あいさつに立った佐藤慶吾福島信陵会長は昨年10月の母校創立95周年記念事業について同窓会員の支援協力に感謝を込め、次のように語りました。「新年おめでとうございます。昨年は95周年大会で大変お世話になりました。今年もよろしくお願いします。本日は歴代会長はじめ現役学生の皆さんら幅広く世代を超えて集まっていただきました。森合世代と金谷川世代の共存共栄というコンセプトで、式典、講演会、祝賀会に600余名、同期会は29卒回、ゼミ会も140人、被災地訪問に100人の参加をいただき、無事終了しました。皆さんの熱い気持ちにお礼を申し上げます。多くの同期会が実現できたのは参加増強部会幹事の尽力によるものです。また、短大部会が発足したことも大きく、被災地訪問チームにも頑張ってもらいました。100周年へ向けて皆さんと共に頑張っていきたいと思います」。
続いて来賓の佐野孝治福島大学経済経営学類学類長、永倉禮司信陵同窓会長が挨拶、佐野学類長は経済経営学類の伝統の力をたたえ、永倉会長はあらためて95周年記念事業への協力への御礼を述べました。このあと谷口幸子副会長の発声で乾杯。祝宴に移りました。乾杯に使われたのは金水晶の大吟醸。斎藤美幸さんの講演を聴いた後だけに一層おいしい味わいとなりました。
新年会には在学生から坂井亮太君(佐野ゼミ)、高原芳樹君(稲村ゼミ)、相馬周平君(朱ゼミ)、山崎彩恵子さん(佐野ゼミ)、神成丈奏君(佐野ゼミ)の5人が招かれました。いずれも地元企業への就職が決まっており、それぞれ「福島のために尽力します」と決意を述べました。各テーブルでは同窓生がなごやかに談笑、世代を超えて交流の輪が広がりました。
最後に学生歌「今日の世紀に」を尾形克彦さん(大22)の指揮で高らかに歌い、小山紀男副会長(大16)が万歳三唱で締め、お開きとなりました。
最後に学生歌「今日の世紀に」を尾形克彦さん(大22)の指揮で高らかに歌い、小山紀男副会長(大16)が万歳三唱で締め、お開きとなりました。
「ふるさとの誇りを日本酒で繋ぐ」
斎藤美幸さん(金水晶酒造店常務)講演
斎藤美幸さんの講演要旨は次の通り。
金水晶酒造店は明治28(1895)年、123年前の創業です。緑豊かで吾妻、安達太良を望む福島市松川町で酒を造り続けて来ました。金水晶の謂れは金と水晶の採れる山があり、水がおいしかったことに由来します。
日本酒の酒蔵は減り続けています。福島市、川俣町などでも酒蔵はありましたが、現在では福島市では金水晶だけです。斎藤家は17代続いていますが、酒屋は4代。祖母は「継がなくとも良い」と言っていました。造り酒屋の跡取りは東京農大などに行くのですが、酒屋を継ぐ決断ができなくて、私自身は医学や建築など進路が決まってしまうところより、何でもやれそうな学部(東京大学教養学部)を選びました。卒業後、フジテレビに就職しましたが、子育てのこともあり、福島に戻って福島テレビに在職しました。しかし、夫がハーバード大で客員教授となることに伴って退社、家族で米国に赴きました。そして帰国後に東日本大震災が発生、造り酒屋は終わりだと思いました。そのときに父親の社長(斎藤正一氏=大学6回卒)が「こんな時こそ頑張らないと」と言って、あの状況で続けることになりました。
その頃、稲荷神社に初もうでに行ったときに金水晶がお供えされているのを見ました。「酒造りをやめたら福島市のわらじまつりでも他の酒が使われることになるのかな。吾妻山をデザインしたカップもなくなる。隣町の月舘や霊山、川俣からも酒造りの依頼が来ている。地元に酒造りがないとどうなるのか」と思いました。下の子の中学受験が終わったのを機に2015年4月に酒造りを継ぐことにしました。
まず、手掛けたことはラベルを変えることでした。純米酒は中身がおいしいのに手に取ってもらうまでが大変。そこで金色のラベルに変え、ロゴも▲と●で金水晶を表現しました。ここにたどり着くのは大変だったが変えました。「福島市唯一の造り酒屋」ともきちっと書き入れました。最初はパッケージを変え、次に米のことを考えるようになりました。金水晶になる米づくりを多くの人に呼びかけて、みんなで作ったことが共通の体験となり、想い出になっていきます。「ふるさとの誇り」ということだと思いました。お酒とは単なる飲み物と思っていたが、金水晶があれば福島の話になる。文化、歴史、気候、思いを伝える働きがあります。福島市の水道水で酒を造ってほしいという依頼も来ています。水道水に使用している摺上川の水は厳しい基準をクリアしています。福島大学の酒も造らせていただいています。「おいしい日本酒を通じてふるさとの誇りを繋ぐ会社」という企業理念で頑張っていきたいと思います。
斎藤美幸(さいとう・みゆき)さん 金水晶酒造店常務。福島市生まれ。福島大学附属中、東京学芸大学付属高校を経て東京大学教養学部卒。フジテレビで報道記者。福島テレビでの報道ディレクター時代、ドキュメンタリー制作で放送界の栄誉である「ギャラクシー賞」を受賞。2015年4月に帰郷、家業を継ぐ。福島大学経営協議会委員も務める。